ウェブサイトおよび研究の紹介

ウェブサイトおよび研究の紹介

私たちは発達障害・精神障害等の特性を持つ日本語学習者が抱える学習上の困難とその支援について研究を行っています。このウェブサイトは、研究成果を共有すると共に、日本語学習者の支援について情報交換をする目的で作成しました。

本ウェブサイトは課題名「認知特性により学習に困難を示す日本語学習者への支援体制構築に向けた基礎的研究」として助成を受けたものです。科学研究費・基盤研究(C)20K00703

これまでの主な研究

論文

「難しさを抱える日本語学習者 ―問題と教員の対応―」『ICU 日本語教育研究 』15,69-79.

澁川晶・保坂明香・武田知子(2018)

研究者らが所属する国際基督教大学での事例研究です。9名の教員に対し、学習者の学習上の困難点とその困難点への対応について、オンラインフォームとインタビューにより調査を行いました。その結果、25の事例が報告されました。分析の結果、学習上の難しさを、1)時間・物事の管理、2)注意の継続、3)新規事項への対応、4)人間関係の構築、5)身体面・精神面における安定、6)理解・産出の適切さ、7)文字の習得、の7つに分類しました。そうした難しさに対し、教員は1)問題・状況の把握、難しさの特定をする、2)学習上の弱点補填と改善法の提示をする、3)教室内での問題が発生しないよう回避するという3つのタイプの対応を行っていました。論文では、筆者らが実際に対応した、人間関係構築に難しさを抱える学生、身体面・精神面における安定に難しさを抱える学生、時間・物事の管理と人間関係の構築及び文字の習得に難しさを抱える学生の事例を詳細に紹介しています。多くの教員が、早い時期に状況を把握し対応すること、各自のペースで進められる教材が必要であること、支援方法についての情報共有の重要性を今後の課題として挙げました。

「日本語学習者の学習困難とその支援-調査結果から見えてきたもの-」『日本語教育』182,80-94.

武田知子・澁川晶・保坂明香(2022)

日本語学習における学習者の困難点とその支援に関する調査結果を報告した論文です。留学生が40名以上在籍する大学316校に調査協力を依頼し、105名の日本語教員から回答を得ました。調査項目は、1)学習者はどのような学習上の困難点を持っているか、2)そうした困難点へどのような指導や対応を行ったか、3)より良い支援をするためにどのような情報やリソースが必要だと考えるか、です。学習者の困難点については、学習面(学習者の日本語力で理解可能であるはずの指示や質問の意図が読み取れない,文字の認識や産出が難しい等)及び行動面(時間管理・整理整頓,他者と交流ができない等)での難しさが指摘されました。それに対し教員は、ペアやグループの調整、本人との面談、個別指導の実施、学習方法・方略・管理方法の助言、他の教員や部署との連携等の対応をしていました。必要な情報やリソースとして、問題の見極めのガイドライン、アセスメントツール、障害の特徴と支援の事例集、情報共有や相談の場が挙げられました。

発表

「言語学習に難しさのある学生への支援 –事例に見る難しさとその対応-」

2018年度母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究大会(2018年8月9日)

研究者らが所属する国際基督教大学での事例研究です。6名の日本語教員を対象にオンラインフォーム及びインタビューを行い、日本語学習者の難しさとその対応について分析をし発表しました。この発表のデータを含めまとめたものが、上の2018年の論文です。

「日本語学習者の個人差要因に着目した学習支援―短期留学生Aの事例から―」

第29回小出記念日本語教育研究会(2020年6月27日)

音声の聞き取り、新出漢字・語彙・文法の習得、文字を書くことに困難が見られた日本語学習者に対し支援を行った実践報告です。複数の情報を関連づけて学ぶという認知スタイルがいかせるよう、「関連性を示す」、「視覚的・運動的手がかりを重視する」等を意識した支援を行いました。

*『小出記念日本語教育研究会論文集』29(小出記念日本語教育学会)に掲載された原稿を転載したものです。

「日本語学習者の学習困難に関する調査報告」

日本言語文化学研究会 第57回研究会(2021年10月23日)

大学で日本語教育に携わる教員を対象に、日本語学習者の学習上の躓きと教員の対応についてオンラインでの質問紙調査を行った結果を発表しました。40名以上の留学生が在籍する大学316校に調査を依頼し、105名の日本語教員から回答を得ました。本発表では、そのうちの日本語学習者の学習上の躓きについて報告しました。調査の全体の結果は上の2022年の論文にまとめています。

*要旨は『言語文化と日本語教育』57(お茶の水女子大学日本言語文化学研究会)に掲載された原稿を転載したものです。

「大学における日本語教員の学習者支援 -半構造化面接から見えてきた教員の工夫と困難点-」

2024年日本語教育国際研究大会(ICJLE)(2024年8月2日)

特別支援の申請がある日本語学習者5名以上への支援経験を持つ教員9名に対し、学習者支援についてインタビューした結果をまとめ、発表しました。質的な調査により、日本語教員の支援における工夫と難しさを明らかにしました。