『自閉スペクトラム症の人たちが生きる新しい世界 ーUnmasking Autismー』
翔泳社
本書は、自閉スペクトラム症(ASD)の当事者で社会心理学者の筆者が、定型発達者のように装うASD者について論じた書籍である。ASDの女性やジェンダー・マイノリティ、レーシャル・マイノリティの人は、周りに合わせ自らの趣向や特性を隠して生きる傾向があるという。筆者は、多くのASD者に仮面をつけさせる構造的抑圧について論じ、仮面を被ることの問題について述べる。全ての人が仮面をつけずに生きられる世界のために何ができるのか、考えさせられる一冊。
『大学生の時間管理ワークブックーADHDタイプや発達障害グレーゾーンでも大丈夫!効率重視でやる気が出る失敗しないマネジメント術ー』
星和書店
本書は、当事者である大学生向けに書かれたものであるが、支援者にとっても参考になることが多い。時間管理だけでなく大学生活全般における問題を取り上げている。いずれも、まずはその問題の背景にある要因を分析することからはじめ、それぞれの要因に応じた対処方法が提案されている。支援者としては、提案方法が参考になるだけでなく、付録の「大学を卒業するまでに身につけたいチェックリスト」から当該学生が大学生活のどんなことに躓く可能性があるかについても知ることができる。
『発達障害者は〈擬態〉する-抑圧と生存戦略のカモフラージュ-』
明石書店
海外の研究により、自閉スペクトラム症(ASD)の人は自らの特性を隠し、周囲に合わせ、カモフラージュをしていることが明らかになっている。筆者は、ASDだけでなく注意欠如多動症(ADHD)や限局性学習症(SLD)の当事者もカモフラージュ(擬態)することは発達障害者や家族、支援者、研究者のコミュニティでは、すでに知られていることだとする。11名の発達障害当事者へのインタビューにより、それぞれの「擬態」のストーリーが明らかにされる。本のカバーに「擬態とは、周囲に合わせるために自分の魂を殺害しつづける行為である」とあるように、重いテーマではあるが、当事者の内面を知るために読むべき1冊である。
『カモフラージュ-自閉症女性の知られざる生活-』
明石書店
データによると、自閉スペクトラム症(ASD)の発症率は男性が女性の4倍だとされている。しかし、これはASDが女性に発症しにくいということではなく、診断されることが少ないためであるという。ASDを持つ人の中には、対人コミュニケーションにおいて他の人とは異なる特性を持っていることを自覚していて、「定型発達」の人に合わせるために、自分の特性を隠したり、周囲に合わせようと「カモフラージュ」していることがあるという。本書は絵本となっており、なぜ女性がASDと診断されることが少ないか、女性のASDやカモフラージュについて視覚的に情報により、理解を深めることができる。
『障害学生支援入門-合理的配慮のための理論と実践-』
金子書房
学習に躓きがある日本語学習者への対応を考える時、どこまで何をすればいいか迷うこととはないだろうか。本書は、大学における合理的配慮を理論的かつ実践的に詳細に解説しているため、迷った時に指針を与えてくれる。本書を読むことによって、対象の学習者との合理的配慮についての話し合いがしやすくなったと感じる。また、躓きへの対応は、意思表明のある学習者への合理的配慮だけでなく、授業設計や学習者への指示の出し方などを誰にでもわかりやすくなるようなユニバーサルデザインにすることでも十分な場合もあることに気づくことができる。
『読み書き困難の支援に繋げる大学生の読字・書字アセスメントー読字・書字課題RaWFと読み書き支援ニーズ尺度RaWSNー』
金子書房
本書は、大学生の読み書きにおける問題を整理した1部、大学生の読み書き検査RaWFとRaWSNのマニュアルの2部で構成されている。日本語教員として日本語母語話者の学生の読み書き能力を測定することはないが、ある学生が読み書きに困難を抱えている時に、その困難はどのような問題によるものなのか、整理することは重要である。そのような特に第4章「読み書きに困難のある大学生への支援」が参考になる。
『発達障害のある人の「ものの見方・考え方」-「コミュニケーション」「感情の理解」「勉強」「仕事」に役立つヒント-』
ミネルヴァ出版
本書は、タイトルの通り、発達障害のある人たちがどのように情報を処理しているのか、コミュニケーション、感情の理解、勉強の仕方、仕事の仕方という4つのテーマに分け、解説している。読みながら、これまで担当した学習者の顔が浮かび、あの時、これを知っていたら違った対応や支援ができたのではないかと考えさせられた。物事の聞こえ方や見え方には個人差があることを理解し、日本語教員としてそれぞれにあった学び方でどう支援するかのヒントが得られる。
『ちょっとしたことでうまくいく発達障害の人が上手に勉強するための本』
翔泳社
AHDH、ASD当事者である筆者が、当事者の人のために、認知特性に配慮した勉強方法をまとめた書籍。難しさを軽減するための様々なツール(Googleカレンダー、Evernoteなどのアプリ)や、具体的な方法も紹介されており、支援をする教員にも参考になる。また、ADHDの多動性により集中できない時に重いものを体にのせるなど体に適度に圧を与えると集中しやすいといった当事者ならでは対処方法も紹介されていて興味深い。
『ニューロダイバーシティの教科書-多様性尊重社会へのキーワード-』
金子書房
発達障害や学習障害による認知特性を、障害ではなく、ニューロダイバーシティ、脳や神経の多様性として捉えるという新たな視点を得ることができる。「脳や神経、それに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で活かしていこう」という考え方は、日本語学習者の支援において忘れてはならないことである。
『「継次処理」と「同時処理」学び方の2つのタイプ』
図書文化社
物事の理解には、情報を順番に一つずつ処理する「継次処理」と、複数の情報を関連づけて同時に処理する「同時処理」という2つのタイプがあり、時と場合により使いわけているという。どちらもバランスよく使い分ける人もいるが、どちらかが得意でどちらかが不得意といった偏りが見られる場合もある。そのような個人の認知の差に着目して支援、指導をすることで、学習効果があがる可能性を指摘している。得意な認知処理スタイルを生かした漢字の読み書きの指導例は日本語指導にも応用できる。
『特別支援教育の理論と実践[第3版]Ⅱ指導』
金剛出版
特別支援教育士の資格取得の研修で使用するテキストである。対象は日本語母語話者であるが、日本語の「聞く・話す・読む・書く」における学習の躓きとその背後にある要素を理論的に学ぶことができる。理論だけでなく、その問題への指導アプローチも紹介されていて、参考になる。日本語学習者に躓きがみられた場合、どこに難しさがあるのかを分析的に捉える視点が得られる。2023年に第4版が出版されており、指導におけるユニバーサルデザインなど新たな情報が網羅されている。
『ことばと文字 』9号
くろしろ出版
「『特集』日本語の読み書きに希望をつなぐために」では、視覚障害、聴覚障害、視覚聴覚障害、ディスレクシアの当事者へのインタビューから、それぞれの日本語文字の習得プロセスを知ることができる。特に視覚障害、ディスレクシアの当事者は日本語学習者であるため、「視覚障害のある留学生にはまず日本の視覚障害者との交流が大事」、「ひらがなを3週間勉強し続けても習得できず、パイパス法という支援を得るまで苦しんだ」などのエピソードは、日本語教員としてどう支援すべきか、考えさせられる。
『よくわかる!大学における障害学生支援ーこんなときどうする?ー』
ジアース教育新社
様々な大学の支援体制、合理的配慮の決定プロセスと入学前から卒業までの支援のポイント、障害ごとの支援事例と課題、海外の障害学生支援に関する現状と動向など、多様な情報が掲載されている。データや表、写真などの視覚的資料も多く、わかりやすい。データについてはアップデートが必要だが、大学における障害学生支援の基本的な考え方や支援方法については理解しやすい、良書である。
『UDL 学びのユニバーサルデザイン』バーンズ亀山静子訳
東洋館出版社
合理的配慮は、障害を持ち、支援への意思表明をしている学習者に対し、個別に提供されるものである。一方で、UDL(Universal Design for Learning)は、障害の有無に関わらず全ての学習者の学びを助け、学習者自身が学びのエキスパートになれるように支援するための概念フレームワークである。本書はUDLの3原則とガイドラインを解説し、UDLの授業デザインを紹介している。最新のガイドラインはアップデートされ、ウェブサイトで参照できる。https://udlguidelines.cast.org/ ガイドライン全てを網羅するのは難しいが、できる範囲で授業に取り入れれば、学習者にとってわかりやすい授業ができるのではないかとやる気になれる本である。
『学習障がいのある児童・生徒のための外国語教育ーその基本概念、指導方法、アセスメント、関連機関との連携-』竹田契一監修 飯島睦美、大谷みどり、川合紀宗、築道和明、村上加代子、村田美和 訳
明石書店
著者らは第二言語教育における学習支援の先駆者である。タイトルからわかるように対象は児童・生徒であるが、学習障がいのある場合言語学習においてどのような難しさがあるのか多くの情報が得られる。特に「第4章 言語学習における認知的、情意的側面」「第7章言語教授のための指導法」は、大学での指導においても参考になることが多い。
『合理的配慮ー対話を開く、対話が拓く-』
有斐閣
合理的配慮とは何か、日本で法制化されるようになった歴史とその考え方がわかりやすく説明されている。その上で、それぞれの場面でどのように配慮すべきなのか、配慮をすることと個人のプライバシーを守ることの難しさについて論じている。合理的配慮が、現代社会における多様な他者の存在への気づきに繋がり、差異を認め合いながら共に生きる社会を築く「共生の技法」となりうるという主張に日本語教員として深く同意した。
『発達障害のある大学生への支援』
金子書房
発達障害のある留学生への支援の情報はあまり多くない。本書では第10章で名古屋大学での障害学生支援体制を取り上げ、具体的な支援事例が紹介されている。留学生は事前に障害について書類等で申請することが少なく、何らかの問題が起こってから明らかになることが多いこと、精神疾患、発達障害を抱える留学生の多くが生育歴の問題を抱え、家族の中で居場所を見いだせずに留学に来ていることなどが報告されている。ディスレクシアを抱える留学生、身体障害と発達障害などいくつかの障害を持つ留学生の事例が紹介されており、参考になる。
『ADHDコーチングー大学生活を成功に導く援助技法ー』篠田晴男、高橋知音監訳、ハリス淳子訳
明石書店
ADHDの学生は特性により、大学生活をうまく過ごすスキルを身につけることは難しいという。時間管理、物事を覚えておく、整理整頓をするなど、すべきことはわかってはいるがそれを実行する際に難しさが生じ、失敗をしてしまう。本書は、ADHDのある学生は、直接的なアドバイスではなく自分で物事に対処することを好むとし、支援のための技法としてコーチングを提案している。コーチとしていかに学生を励まし、アドバイスや建設的なフィードバックを与え、学生を支援するのか、具体的な事例でわかりやすく示されている。コーチングは教えるという教員の仕事とは全く異なる支援方法である。本書の「学生こそがエキスパート」という言葉は、支援において重要な視点であるだろう。








